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 モンゴル・レター  

No.33 2003/9/17 (不定期発行)

 

森から追われる最後の狩猟民たち(後編)

 

 中国には約26000人のエウェンキがおり、そのほとんどが内モンゴルに居住している。その多くはすでに内モンゴルの都市部に住んでいるが、中国の都会の暮らしに順応するのはそれほど容易なわけではない。

 リウバは、アオシアン出身で高等教育を受けた初めてのヤクートで、内モンゴルの首府フフホトの美術専門学校に入学した。1981年に卒業して、市内で美術関係の出版社に就職したが、都会の暮らしに順応できずアオシアンに帰ったと『北京青年日報』は報じた。故郷の村でリウバは酒に溺れ、昨年酔っ払っている時に溺死したという。「突然の変化というものは、厳しく野蛮なものです」と、ヤクートといっしょに住んだ経験のある漢人が『青年日報』に語った。「それは人びとにとってとても残酷なものです。リウバの悲劇は部族社会から現代文化に順応しようとする世界中の人びとにとっては身近な問題であるだろう。 

 中国共産党はエウェンキ狩猟民を、国内の辺境に居住するチベット、モンゴルなどのマイノリティと同様、経済発展が必要な後進的な文化グループとみなしている。「ヤクートの生産様式と生活水準は後進的である」とアオシアンの党書記は電話で答えた。「彼らのほとんどは移住を歓迎している。もし彼らが次の世代の運命を考えるならば」

 ヤクートのコミュニティ・リーダーであるダワナ氏は、リウバの悲劇を避けるための鍵は教育だと考えている。ダワナ氏はヤクートが森を出るための支援をしてほしいと地元政府に頼んだ。しかしながら、もっと若くて教育を受けたヤクートでさえ、移住が彼らのためになるかどうかは確信がない。

 リウバに続いて、ニウリカは2年前に大学に通い始めた。この20歳の学生は休みごとにアオシアンの祖母の家に戻り、まもなく失われてしまう生活様式を記録するため写真を撮り続けている。「いつの日か、人びとが私の写真によってエウェンキ狩猟民の文化を理解してくれることを願っています」と『北京青年日報』はニウリカの写真とことばを引用している。ニウリカは中国の教育システムから恩恵を得ているが、新アオシアン村への移住に対しては強い疑問をいだいている。「私たちは好きなように地べたに座ったり、昔のようにたき火をしたりできないのです。トナカイたちはもう私たちのそばを歩くこともできないのです」と彼女は語った。「たぶん私たちはテレビや電話をもつようになるでしょう。でもそれが一体何だと言うですか?」

(ドイツ・プレス・エージェンシーDeutsche Press-Agentur2003.8.24付、北京)

 

[編集後記]

 悲劇を生まないための鍵は教育であるという。でも、それはどんな教育のことを言っているのだろうか。効率を優先する教育を進めてきた日本で、そして世界でいま何がおこっているのか。お互いの違いを認め、多様性を大切にして共存していくことこそが環境の世紀と言われる21世紀に人類が平和に生きていく道ではないのか。世界中でおこっていることを、狩猟民や遊牧民が自らの伝統社会と客観的に比べることができるようなそんな教育であればと願う。

ニウリカの地道な取り組みは、内モンゴルのモンゴルにとっても重要な意味をもっている。

 

 [編集・発行] SMHRICOSAKA

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