Southern Mongolian Human Rights Information CenterSouthern Mongolian Human Rights Information Center
HomeAbout UsCampaignsSouthern Mongolian WatchChineseJapaneseNewsLInksContact Us

 

< 戻る >

 モンゴル・レター  

No.32 2003/9/17 (不定期発行)

 

森から追われる最後の狩猟民たち(前編)

 

 アロンブ氏は中国東北部の森の中にある放牧地から300キロ離れたところに移住したが、自分のトナカイたちが新しい環境に順応できるかどうか心配している。8月半ば、アロンブ氏と同じヤクート人たちは、新しい村を建設するためモンゴルとシベリアに近いヒャンガン・ダワー(大興安嶺)の中にある故地を離れた。ヤクートはエウェンキの一部で、中国が狩猟民と認める最後のエスニック・グループである。新しい村でヤクートたちは狩猟を許されず、トナカイは小屋や家畜囲いの中で飼育されることになる。

 「生活水準は森で暮らすよりいいのだが、私のトナカイは2日間ほど腹をすかせていましたよ」と、新アオシアン村に引っ越したばかりのアロンブ氏は『北京青年日報』の記者に語った。アロンブ氏は、今年末までに森を去ることになっているヤクート139人のうちの先発グループ37人の1人である。しかしながら、旧アオシアンやその周辺の森に住むヤクートのほとんどは伝統的な暮らしを捨てるのを嫌がっている。

 地元政府は、森林とその生態系を保護するための「生態移民」という名の下にヤクートを移住させていると言っている。アオシアン村を管理する根河市政府報道官のリウ・ジーシン(Liu Zhixin)氏は移住には複数の理由があると言う。「森林に居住するヤクートは少数にもかかわらず、彼らの飼育する800頭のトナカイが森林の地衣に生えるコケやキノコに大きなダメージを与えている」と同氏はドイツ・プレス・エージェンシー(DPA)の電話インタビューに答えた。「放牧が森林にとって大きな脅威でないとしても、次第に大きなダメージになっていくのです」とリウ氏は言う。同氏は「アオシアン村は自然保護区内にあり、2つの河の合流点に近くしばしば洪水が起こる地域で、移住はヤクートの経済発展の一助となるのです」と語った。

 ヤクートは1965年にアオシアン村に移住して来た。中ソ間の緊張が起こったため、中ソ国境にあるエルグネ(アルグン)河流域から避難したのである。ヤクートは、シベリアのバイカル湖から次第に東南に移動して、18世紀初期以降エルグネ河沿岸に移住した。しかしながら、ヤクートの近年の移動は最も大きな象徴的意味をもっている。それは、ヤクートの生活様式を永久に変えてしまうかも知れないからである。「実際の距離はさほどでもないが、精神的距離は300キロ以上ある」と『北京青年日報』はアオシアンから報告した。

 一部住民は新アオシアン村への移住に強く反対している。リウ氏が「ほとんどのヤクートは政府の移住計画に賛同している」と言っているにもかかわらずである。「老人の一部がかなり抵抗しているのは事実ですが、政府は移住に合意を得られるよう最善を尽くしています」と同氏は語る。そして、ついに最初の11戸全員が移住に同意した。「メディアは先発の37名のうち数名が戻って来たと報じているが、それは事実ではない」と、中国共産党アオシアン支部書記が語った。

 移住者は村を去る前に猟銃を引き渡さなければならない。猟師らは約1000元(120米ドル)の年収と枝角やトナカイから作る製品を売って得る平均4000元(480米ドル)の副収入を失うことになる。それでも、彼らはトナカイを飼い続けるだろう。「役所では新アオシアン村に加工工場と観光客誘致のためのマイノリティ・ビレッジを建設する計画である」と、リウ氏は語る。(ドイツ・プレス・エージェンシーDeutsche Press-Agentur2003.8.24付、北京)

 

[編集後記]

 人類が好き勝手に陵辱し続けてきた自然環境を保護せざるをえなくなった21世紀。深刻な環境問題をかかえる中国が打ち出した「生態移民」の説明はわかりやすい。ただ「移民」の対象になっているのがほとんどマイノリティ・グループであり、移住によって伝統的な生活様式を捨て独自の文化を失ってしまうことがクローズアップされることはない。根こそぎ失われようとしている伝統文化を守ることは、「環境保護」の大義名分の前には無力なのだろうか。

 

 [編集・発行] SMHRICOSAKA

< 戻る >

 
From Yeke-juu League to Ordos Municipality: settler colonialism and alter/native urbanization in Inner Mongolia

Close to Eden (Urga): France, Soviet Union, directed by Nikita Mikhilkov

Beyond Great WallsBeyond Great Walls: Environment, Identity, and Development on the Chinese Grasslands of Inner Mongolia

The Mongols at China's EdgeThe Mongols at China's Edge: History and the Politics of National Unity

China's Pastoral RegionChina's Pastoral Region: Sheep and Wool, Minority Nationalities, Rangeland Degradation and Sustainable Development

Changing Inner MongoliaChanging Inner Mongolia: Pastoral Mongolian Society and the Chinese State (Oxford Studies in Social and Cultural Anthropology)

Grasslands and Grassland Science in Northern ChinaGrasslands and Grassland Science in Northern China: A Report of the Committee on Scholarly Communication With the People's Republic of China

The Ordos Plateau of ChinaThe Ordos Plateau of China: An Endangered Environment (Unu Studies on Critical Environmental Regions)
 ©2002 SMHRIC. All rights reserved. Home | About Us | Campaigns | Southern Mongolian Watch | News | Links | Contact Us